午前五時の殺風景

表染という、ミステリとホラーを好む社会人が書いています。日々言葉が死んでいく。

記事まとめ

自分でも何を書いたのかわからなくなってきたので、ここにまとめておきます。

【好きな本のレビュー ネタバレ無し】
・そのナイフでは殺せない 著:森川智喜
【紹介】そのナイフでは殺せない - 午前五時の殺風景
・あと十五秒で死ぬ 著:榊林銘
あと十五秒で死ぬの感想メモ - 午前五時の殺風景
・隣の部屋の女 著:白井智之
今年初白井智之『隣の部屋の女』を読んだ話 - 午前五時の殺風景
・奈々子の中で死んだ男 著:白井智之
白井智之『奈々子の中で死んだ男』を読んだ話 - 午前五時の殺風景
・デスゲームの話
デスゲーム系ミステリのアンチでありファン - 午前五時の殺風景
・2021年の好みだった本
【2021年の好みだった本】遅れた - 午前五時の殺風景


【好きな本のレビュー ネタバレ有り】
・東京結合人間 著:白井智之
東京結合人間/白井智之 ネタバレ有レジュメ - 午前五時の殺風景
・お前の彼女は二階で茹で死に 著:白井智之
お前の彼女は二階で茹で死に ネタバレ有感想 - 午前五時の殺風景
・そして誰も死ななかった 著:白井智之
そして誰も死ななかった 白井智之 ネタバレ感想 - 午前五時の殺風景
・ミステリー・オーバードーズ 著:白井智之 #1
ミステリー・オーバードーズの咀嚼(白井智之) #1 - 午前五時の殺風景
・死体の汁を啜れ 著:白井智之
死体の汁を啜れ 白井智之 ネタバレ感想 - 午前五時の殺風景

【作家語り】
・白井智之
【白井智之のすすめ】納得できないくらいなら - 午前五時の殺風景
・白井智之2
【白井智之】追記 - 午前五時の殺風景
・2021年 白井智之活動まとめ
2021年 白井智之作品まとめ - 午前五時の殺風景
・白井智之 リンクまとめ
白井智之 エッセイ・インタビュー等リンクまとめ - 午前五時の殺風景


【好きな音楽】
・月飼い 作:ポルノグラフィティ
【ポルノグラフィティ】午前五時に反転したものを引きずり続ける - 午前五時の殺風景
・証言 作:ポルノグラフィティ
『証言』で心臓を抉られる今日この頃 - 午前五時の殺風景


【好きな映画】 
……………記事作成中……………


【変な話】
・借上社宅がずっと変
借上社宅がずっと変 【変な話#1】 - 午前五時の殺風景
・会社の駐車場に出る話
会社の駐車場に出る話 【変な話#2】 - 午前五時の殺風景


【雑談】
ポルノグラフィティに対してのお気持ち表明
ポルノグラフィティへの気持ちをいい機会なので語っておく - 午前五時の殺風景
・殺意って大事
殺意って大事 - 午前五時の殺風景
チェンソーマン ※ネタバレ有り
チェンソーマン第二章が白井智之すぎる ※ネタバレ有 - 午前五時の殺風景
・界隈が荒れてつらい
ファンとは?と考え始めて眠れない - 午前五時の殺風景

お前の彼女は二階で茹で死に ネタバレ有感想

夏バテでご飯が食べられない表染です。
酒は飲むけど。

今回は、8月5日に文庫化された白井智之氏の『お前の彼女は二階で茹で死に』の感想をネタバレ有りで書いていきます。感想というか、考察というか、レビューというか、まあそこらへんはいつもの如く混在しておりますが……。文庫ベースです。

単行本>>

文庫本>>

ではさっそく行きましょう。(以降ネタバレ&品のない言葉注意)

ミミズ人間はタンクで共食い

内容

ヤマトがミズミミズの水槽に入れられて死ぬ事件。溺れた後になんと全身をミミズに食われている。
設定自体は異常ではあるものの、死体自体は「何故か尿を飲んだ後に水槽内の水で溺死している」という不可思議な状態となっている。

謎を解決する糸口は「水槽に幼児を入れたら暴れるので水飛沫が上がるはず」というごくごく普通の事象だ。とんでもない世界観とは裏腹に、ロジックを積み立てるところは真っ当で、事件の手がかりとなる「濡れた形跡のない水槽周りの埃」「初見では手入れが困難なミミズの飼育」というのは現場検証の時点でしっかりと記述されている。どこまでも本格だ。

しかしこれでは終わらない。ここまでの真っ当な積み立てがありながらも最後の一押しは特殊設定。

ヒメの指紋が部屋の高所に付いていた
=彼女はミミズである
=ミミズであれば水槽に張り付いて登ることが可能

という、序盤に明かされていたノエルのミミズとしての性質を利用としたものだった。まったく、目の背けさせ方が上手い。

これだけの推理をしておきながら、実はこれが推理の全貌ではない。推理のベースには、サクラ、ユリ、ヒメの3名それぞれの犯人説があった。誰がノエルにレイプされたのかによって、3つの真相があったのだ。そして幸いにもノエルが自殺していたため、ヒコボシは好きな真相を選び取ることができた。そう、ノエルの遺書さえ捏造してしまえば、長年恨んでいたサクラが犯人であると確定させることができる。例え彼女たちがミミズの家系であっても、ヒメが高所に登れたとしても、ヒメが「ミミズ屋さん」と意味深な言葉を発していたとしても。

余談

どこでこの話を挟むべきか迷っていたが……。
この本のタイトルは『そしてカバたちはタンクで茹で死に』が元になっていると思われる。こちらは読んだことがないので、内容がオマージュなのか、ただ語呂が良くて持ってきただけなのか、わからない。

この短編は元は『ミミズ人間と青春のための殺人』というタイトルでジャーロに掲載されていたものなので、内容は関係ないんじゃないかと踏んでいる。
ちなみにこれ以降の話は全て書き下ろしである。

アブラ人間は樹海で生け捕り

内容

「自分の腸が、今どんな気持ちか分かる?」
知らん。

ということで第二作。これくらいセンセーショナルな一言を発してくれるなら、私も宗教勧誘に心躍るかもしれない。

ベロリリンガという、肛門に金属球を突っ込む宗教を信仰している村『尻子村』と、その隣の『辺戸辺戸村』の住人の間で起こった毒殺事件の話だ。

伏線がかなり多いながらも、読んでいてもそれがどう推理に結び付くのか気付くのが難しい。
例えば隠し味とか、調味料の容器を移し替えていたこととか、事件当日のガス漏れとか、ガリの発狂とか、やけに汚すぎるトイレとか、尻子玉とか。全部推理に使うのだろうなとは思いつつも、さっぱりわからない。あまりに異様な状況に、脳がフリーズしてしまう。

かなり丁寧にロジックが書かれており、「こういう可能性もあるのでは?」と思ったことが軒並み次ページで考察されていて脱帽した。

あとこれは二作目だからこその話になるけれど、ここでノエルの小説が発見され、
私たち読者が読んでいるノエルの強姦シーン=ノエルの私小説なのでヒコボシとマホマホにも共有済み
という構図が明らかになり、本当にフェアな立場に置かれることになった。そして加えて、
ノエルの強姦がどのように推理に変化を与えるのか
というのを読者に考えさせるようになっている。特に本作は、強姦が事件と関係あるようにはなかなか見えない構図になっているからこそ面白い。

余談

登場人物名。沢尻アスカや阿部良サダオも酷いけど、そもそも根本として
ヒコボシ、オリヒメ、オシボリ
って何? しかもオシボリじゃなくオリヒメが先に死ぬことある?
ペアとして残しておくべき名前も殺すあたり、無慈悲だなと改めて思う。

トカゲ人間は旅館で首無し

内容

トカゲ人間の設定が一番イメージが難しかったように思う。(私は奇遇にもこれを読む少し前から爬虫類の脱皮動画を見るのにハマっていたので、ぺりぺり皮を剥ぐのがとても想像しやすかったが。ちなみにとってもかわいい。)

旅館の女将とその長男が惨殺される、しかも密室だったという比較的お決まりのシチュエーション。これも推理は綺麗なのだが、救助隊の応援が呼べないことを「地滑りにあって全滅」という理由でばっさり進めているのが面白い。推理以外の部分があまりにもご都合主義だ。

この事件では犯人が二人いることになった。ミステリでは犯人が一人である方が美しいと私は思うのだけど、これは二人である理由が血溜まりの擦り傷とトカゲの性質で比較的シンプルに導き出せていて面白いと感じた。
ヒコボシ自身が午前四時に女将が生きている姿を見たと誤認させられたこと、長男の殺害現場が密室になっていたことでかなり事件は複雑化しているが、かなり人間心理(トカゲの話なのに)を突いた推理で真相に迫っている。

問題はそこからだ。帯にも『スラッシャー小説』と書かれているように、ここに来ていきなりジェイソンが暴れたかのような殺人撃が繰り広げられる。ゲンタが

「ばらばらに行動を始める登場人物たち。この後、大殺戮かな」

と言っているのが、皮肉にも本当になるわけだ。
間違いなくスラッシャーで、人間を豆腐だと思っているかの如くバサバサと死んでいくが、あくまでも語り口は淡々としているから過度なグロテスク要素は感じない。逃れようがなく皆殺しにするしかなかったのだなと冷静に納得できてしまう。

そして最後には、全ての推理がまたノエルの強姦により覆ってしまう。これに気づいたのが、先程まで大殺戮ショーをしていたヒコボシだと思うと本能と理性の切り替えが激しくて笑ってしまう。
またここではノエルが生きていることが明かされるが、読み返してみると、ヒコボシはノエルの死を確認していないとわかる。あくまでノエルの家に行った時は「自殺を図ったのだろう」と推測するだけで、その後オリヒメが到着してからも死体の確認はさせていないし救急車も呼んでいない。
リチウムの復讐のためならなんでもできるヒコボシだからこそ、ノエルを仲間に引き入れたのだろう。

余談

「なんで二階から落ちてきたんだ」
「春が近いからでしょう」
これは伊坂幸太郎すぎ。

水腫れの猿は皆殺し

内容

登場人物たちの関係性が見えてきた。
リチウム:デンに強姦される。ノエルがいじめられていることも相まって、水腫れの猿に加入しデンを殺してもらおうとする。
ヒコボシ:リチウムの兄。彼女がいじめにあっていたことを知っており、リスカの最後の後押しとして湯溜めで流血を助長してしまったことを後悔している。
楢山デン:リチウムを犯すクズ。
ノエル:リチウムの友達となる。彼女のことが好きだった。後にヒコボシと協力関係を築く。

実は皆繋がりがあったわけだが、それはそれとしてノエルは劇団の殺戮に巻き込まれることになる。団長の猿田が死に、その後他の劇団員も死亡する。

しかし犯人はノエルだ。トレーラーを釣り上げることで猿田を殺した。そして、猿田殺しの後に四人の死体も見つける。
混同しないように言っておくと、ノエルは殺しかけただけで、実際に殺してはいない、というか失敗に終わっている。殺せたのは猿田だけだ。

ここでは、ここまでの文がノエルの手記であるということが大きく活かされている。明らかに犯人でありながらも、意図的に自分が檻から出られたこと、夜に起こったことは省いているのだから。
大きく趣向が違うトリックを仕掛けてきた印象があり、とても良かった。

一応ここで時系列も整理しておこう。

ノエルが団地で犯す
↓6ヶ月後
ノエルが樹海で犯す
↓4ヶ月後
ノエルが旅館で犯す
↓5ヶ月後
『ミミズ人間〜』の事件が起こる
ノエルとヒコボシが知り合う
↓この間『アブラ人間、トカゲ人間〜』が起こる
『水腫れ〜』の事件が起こる
あらゆる死体が集結する

後始末

散々ミミズやトカゲの特殊設定を使ったと思ったら、ここでは性癖を足掛かりにして最後の推理を組み立てる。まさかあれだけの下品な情報が伏線だったとは、どうやったら気付けよう。
黒塗りされたハメ撮り写真。猿しか愛せない男。勃起障害、パイパン好きのデン。

キュンとするリチウムとノエルの恋愛物語などは無く、童貞が遊ばれただけで思い出を引きずり続けているという地獄絵図だったわけだ。
それを、レイプをやりかける時に気付くノエル、やはり優秀。……まあ最後は結局、力付くで敗北するのだが。

前章の時点でかなり衝撃だったのだが、ここでも一つ爆弾を落とすあたり、最後まで気が抜けない作家だなと改めて思う。
全てが前座というか、どこまで行ってもその先に推理がある。何が前座で何がメインかという議論も烏滸がましく、これ全てで一つの本が完結しているとしか表現できない。全ての短編が次の作品への下地で、しかしインパクトはメイン級で、出し惜しみなく作り上げる執念が怖い。

もう一度タイトルを見返すと『お前の彼女は二階で茹で死に』彼女、彼女か…………………結局、良いラブストーリーだった。
ぜひ読了した方々には、胸キュン青春ラブストーリーとしてこの本を広めていただきたい。

ファンとは?と考え始めて眠れない

私の好きな方々が連続で物議を醸している。
具体的に言うと、ポルノグラフィティのアルバム曲のMV。東海オンエアの寝たら即帰宅の旅。
こんなに荒れるタイミング、なかなか無い。

根幹は似ているような気がしたので、自分の気持ちの整理がてらつらつら書いてみる。有意義な結論が出るかはわからないけど。


今日はポルノの方に焦点を当てる。

そもそもポルノの界隈がここまで賛否両論が出ることは無い。ファンが比較的、ポルノグラフィティイエスマンだから。
これは20周年のライブで本間さんに「君らなんでも好きって言うでしょ?」と言われたのもそうだし、私もそういう風潮があるのは感じている。私自身もたぶん、結構、イエスマンというか神聖視している節があるし。

それが100%悪いことだとは思えなくて、許容された分だけ新しいことに挑戦する勇気が持てるというメリットもあると思っている。実際2人は足を止めずに進んで、新しいことにもいつも挑んでいる。
そういうところが、素直にすごいなと思うし好き(勿論曲が好きなのは前提として)。キャリアにあぐらをかかず、不安になってもひたむきに頑張って、ファンをなんとか安心させて、一生懸命なところ、すごい。


そんな2人の足を、今回の批判で止めてしまったのでは無いかと危惧している。将来に不安はないと言い切ってくれた昭仁さんの気持ちを無碍にして、晴一さんの前向きな考えも無視して、私のエゴを押しつけたのではないかと考えてしまう。
人柄が良いのを知っているから、なんだかとても良心の呵責がある……酷いこと言ったかもしれない、ごめんね……。

堂々とした言い訳になるが、2人が作ってくれた曲が大好きで、2人の曲というか『私の曲』と思うほどに好きになってしまっているからこそ、他の解釈を受け入れる余地がなかった。私は私の世界観を守りたかった、ということだと思う。
そこでもっと教養を広げようとか、解釈を得ようとか、教育じみたことは要らなかった。そういうのは他でやっているから、せめてポルノとの世界は守りたかった。陳腐だろうが曖昧だろうが、私には私の世界観があったのだ。

と、書いておいてあれだけれども、ここまで強い気持ちがあるとは自分でも思っていなかった。そりゃあそうだけど。「どれぐらい好き?」と問われても定量的に測ることが不可能だったのに、いきなり相対的な尺度を受け取ったのだから、びっくりするに決まってる。


そんな葛藤を抱えているわけだけど、では今後どうしたらいいのか? どう整理をつけようか?


人と人は完全にわかりあうことはできない、という事は念頭におきながらも、受け止める事はできる。

私は、2人がどんな意図で実行して、結果に対してどんな気持ちなのか、わかる範囲でだけれど調べて受け止める。それでも自分の世界観を守りたいなら、それはそれで良し。

そして2人には、ファンの声を聞いてもらうだけでいい。その後ファンに迎合する形を取るのか、やりたいことを貫くのか、その他裏の気持ちが何かあるのか知らないけれど、好きにしてもらって構わない(何様?)。
「ファンって一括りにしがちだけど、君らファンだって一人一人の人間だってことを忘れてはいけない」と言ってくれた晴一さんと、「ポルノの将来に不安はない」と言ってくれた昭仁さんが考えて出した結論なら、それは意味があるものなんだろう。

だから、2人が考えてくれた結論なら何しても良し。私は自分の好みに合わせて、摂取したりしなかったり選択するから。今回のMVにしても、気に入れば繰り返し見るし、そうじゃないものは見ないで曲だけ聴く。そもそも、私はポルノの全曲が好きなわけではないし、選択的に聴いているし。いつも通り。
MVをライブに持ち込むってなると少し話変わってきてしまうけれど、まあその時は自分が1番気持ちよくなれるようにどうにか考える。

私はこれからも嫌なところは嫌と言うけれど、2人の気持ちは理解したい。そこでどうしても理想と現実がずれたら仕方ない、そういうこともある。


……………書いていて思ったけれど、結局フラットに推してる人と同じような状況が適切だと気付いてしまった。まあ、こんなに悩んでおきながら結論はシンプルになりがちかもしれない。
好きなものだけ楽しむ。以上。
合わないのがあってもいいし、本人たちもファンの意向に100%合わせなきゃいけないわけではない。そこはね、双方理解すべきだと思う。

とりあえず、これからもポルノは好きだし、ツアーははちゃめちゃに楽しみにしてるし、超絶過度な期待を寄せておく。
なんせ5年ぶりのアルバムの完成度が高かったから、ここは遠慮なく盛り上がらせてもらうぞ。


めんどくさい人がめんどくさい惚れ方していて申し訳ない。お目汚し本当に失礼しました。