さて、本日は8月下旬発売の白井智之氏最新刊。
『死体の汁を啜れ』の感想をネタバレ有りで、ずらずら書いています。いつも以上に理路整然に欠ける書き殴りっぷりです。
写真は為書きサイン本とクリアファイル。自慢したかっただけです!!見て!!わーい!!
以下読了後の方のみ、お進みください。
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【前日譚】
プロローグだし特に言及しなくていいかなあ……と思ってたけど、いやいや突っ込まざるを得ないぞ。
『ミステリー文学界の焼け野原』?
『二階から目潰し』ってタイトルの小説が20万部売れる世界線?
治安がやべえ。ワードセンスもやべえ。尖りすぎてて、この世界で生き残れる気がしない。
【豚の顔をした死体】
帯でも『豚の頭をかぶった死体』と書いてあったので、ドンキで豚の被り物でも買ったんか〜と思ってたら全然違った。
頭の皮を剥がされて?豚の頭部を掻き出して?かぶせる?
予想の数段上を行くじゃん……。
そして私、常日頃「白井作品は人を人とも思ってないしモノ化しているので、キャラ萌えなんてない。そこがいい。」と思っているのですが、今回ばっかりは深夜ラジオ好きのやくざがかっこええんだわ。
ところでこの豚の頭は、有名映画SAWが発案元になっているような気がするんだけど、どうだろうな。誰か確認してくれ。
【何もない死体】
いやあこういうの好き! 発想がブラックなミステリ大好き! 心が潤う!
ギロチンで殺害っていうのは単純にインパクトがあるんだけど、その後に続く四肢の切断、そして雨水を飲んだ不思議な死体っていう、謎が止まらないところが良い。
せっかくなので数年前に展示を見に行ったギロチン(複製)の写真も貼っておこう。
さらには、子供に意図的に言葉を教えない、子供に最大限のトラウマを植え付ける、四肢切断はただの実験……歪んだ意図のオンパレード。
しかも『図書館という言葉を教えない』という伏線のくだり。ジュースにアレルギーがあったからでそれがキーポイントになっているのでは、と思うようにミスリードしてない? だってミステリでアレルギーは常套句じゃん……。
結末も綺麗なオチがついてて良い。実験して確かめられてよかったね、青森さん!
【血を抜かれた死体】
吸血鬼を想像したよね。そうであってほしかったよね。でも残念ながら違うんだなあ……逆さ吊りでぐちゃぐちゃにされているんだなあ……。
真相(適切な答え?)は鏡を使って鍵を二つに見せかけたというかなり単純な仕掛け。
あまりにもシンプルすぎる密室で、正直、二つの死体を紐でねじねじしてぶるんぶるん糸回収する方が頭いいなと思ったり。
でも単純な割には、あまりにも不可解な白黒塗り潰しおじさんや、食道空っぽ事案に説明がついているから、私は「くそう……意外とちゃんとしててつっこめない……」と悔し涙を流すのであった。
【膨れた死体と萎んだ死体】
はい来た、本作で私が好きな伏線第一位のビニール袋。天才か?
これだけでご飯が進む。私は会社で読みながら感動で震えた。ありがとうエレガントな伏線。ありがとう白井智之。
しかもラストもいい。上手いこと平和路線に戻れるハッピーエンド。
さっきの血抜き死体のラストもそうだけれど、たまに人間関係がオチに繋がってくるからやめられないってばよ。
【折り畳まれた死体】
蝶番の位置だけで危険性が変わる拷問器具を考えたのすごいな。(いやそもそも何かしらの拷問器具を考える人って時点で怖いんだけど。)
この話の短さにして、このどんでん返しの多さよ。多重解決である上に、全部が毛色の違う犯人と事件像を提示するから余計面白いし、まさか最後にあの結末を迎えるのは想像できないでしょ。
振り返ってみると、この話に伏線じゃないところないんじゃない?と思えるくらい濃い。
せっかくなので数年前に撮った鉄の処女(複製)の写真も貼っておこう。
※明治大学博物館の刑事部門で見れます。拷問器具展示場ではなく、刑事罰についての博物館の一角ということで置かれています。
【屋上で溺れた死体】
うーん……犯人が大学サークルの人と組んでいる可能性が議論されていないのがちょっと気になった。(どこかに書いてあったらすみません。)
小休憩にちょうど良いかなというかんじ。これが好きな人は、『少女を殺す100の方法』の某作も好きそう。
【死体の中の死体】
一番奇妙な死体にして、一番合理的に説明されていたと思うのです。表染のベスト死体ランキング1位。
しかもこのアクロバティックロジックに加えて、ストーリーとしての盛り上がりも開始し、各キャラが露骨にかっこよくなり、全部にアクセルがかかる。
淡々とした短編集のようになっていくのかと思っていたからこの急展開はほんと嬉しい。
本作タイトルの『死体の汁を啜れ』の意味もここで明かされますね。死体を利用して、うまいこと金をむしり取っているこの探偵たちにぴったりです。
ちなみに251ページには「三十年くらい前に妊婦さんのお腹に電話が突っ込まれる事件がありましたが」とあり、これは現実とリンクしている。(詳しくは『名古屋妊婦切り裂き殺人事件』で検索してね。)
さて、覚えておいてほしいのは268, 271, 286ページ。「やってられるか!死ね!」のサインは、サインを出した側から見ます。いいですか、サインを出した側です。
【生きている死体】
秋葉ああああああああ!(表染が絶望の叫びを発した。)
いやほんと無慈悲だな。『人間の顔は食べづらい』に並ぶ無慈悲さ。涙が出てくるよ。過去読んだミステリの中で一番興奮を感じた。
いくら人を殺さないのがポリシーだからって、そんなことある?と思いながら読んだけど、310ページで袋小路のコメントがなくなっているのが凝ってて好きだった。
あとあまり気にしないで読んでたので、下平々のラジオパーソナリティが二人で袋小路込みだということをシンプルに忘れていたんだよなあ……不覚……読み返してから気づいたよ……。
【後日譚】
これを読み終わった時点で、人生で好きな本ランキングトップが確定しました。ありがとう、書いてくれてありがとう……白井智之ありがとう……。
さて、こんなオタクのキモい感想ばかりじゃ吐き気がするので、一応秋葉について書いておきますね。
青森は、大きな勘違いをしています。あまりにも白井先生がもっともらしく書いているので、適当に読むとすっ飛ばしてしまうかもしれませんが……。
親指のサインは、サインを出す側から見た向きで決まります。
今の場合、サインを出しているのは秋葉。秋葉から見ると、左に曲がっているのです。青森は「いいね!」の意味にとらえていますが、その逆で「やってられるか!死ね!」が正解です。
さて、何故秋葉はそのようなサインを出したのでしょうか。ヒントは34ページにあります。
「食いっぱぐれない程度の金を稼いで、深夜ラジオを聴きながらのんびり暮らしたいだけなのに」
さらに327ページ。
「左耳の聴力が残っていたこともわかりました」
「病室にはラジオが流れていた」
328ページ。
「ラジオの音が止んでいるのに気づいた」
ある程度の(赤麻組からぶんどった)金があり、動くわけにもいかないので病室でのんびり暮らす。しかもラジオを聴くだけの聴力は残っている。この状況、秋葉にとっては天国ですよね。
しかし、大好きだったラジオパーソナリティの袋小路は赤麻組に引き渡され、ひどい目にあっていると言います。当然今までのラジオコーナーが継続しているとも思えません。
それを知った秋葉は「やってられるか!」という気持ちを込めてラジオを消し、自殺したのだと推測できます。
ただ、秋葉が「犯人は袋小路じゃねえよ!」と言いたかった発言も100%否定することはできないように思えます。袋小路が水責め拷問が怖くて嘘をついた可能性もありますし、ここまでの物語で散々多重解決をしているからこそ、この真相が正しいのかを証明できない。
だから私は、まだ完璧に秋葉の心理を把握できたわけではないのです……もっと深い伏線がどこかにあったらどうしよう……。
真相を明らかにすべく更に読み込むけれども、「表染の言っていること間違ってるよ!」と思った方はどうにかして教えてください。
はい、書き殴りの汚い感想はここで終わり。メモ書き程度の薄い内容だけど許して。
いつか伏線を全部まとめてレジュメにしたいですね。ではまた。