午前五時の殺風景

ミステリとホラーを好む社会人。音楽もたまに。日々言葉が死んでいく。

縛られた男 感想

久しぶりに本の感想です。
リハビリがてら、WEBで手軽に読めるこちら。


STORY BOX 2023年11月号掲載
縛られた男 (白井智之)

白井智之「DETECTIVE FICTION」|STORY BOX


写真でかすぎてごめんなさい。
大きさの変え方よくわからなかった。
今回はネタバレなしで書きます!考察も特にない!




あらすじ

探偵の温湯湧太郎は、居酒屋でコンサルタント馬毛島圭一と出会う。
後日、馬毛島は不人気な探偵事務所を立て直すプランを考え、温湯と馬毛島のビジネスは軌道に乗り始めるが、ある日スポンサーに関わる殺人事件の謎解きを託される。


感想

なんだろうこの、白井智之大得意の多重解決を全力でふざけてみた!ってかんじ。

さすがに謎解きパートはげらげら笑ってしまったよ。
ラストは少し単純な部分もありながら、そこにこの文体と社会に中指立てた思考が合わさって、こんなに面白くなるものかと。
鬱屈とした社会人に是非お勧めしたい話だった。
個人的には50ページが一番好き。
シーンが鮮明に頭に浮かんだ。
サンドウィッチマンがネタでやりそうなテンション感がいい。

そして白井作品に出てくるこの温湯くんみたいな、うだつが上がらないけどなんか人生楽しそうなやつが好き。
なんだかんだでこいつ、自分の人生が愛おしいと思ってそう。ゴミだとも思ってるだろうが、同じくらい愛おしいと思ってそう。
いや、温湯くんはだいぶ不幸なんだろうけどね。それも似合うというか、無理に背伸びしても似合わねえよって感じがいい。
『死体の汁を啜れ』に出てくる秋葉くんとかもそうだけど。

最近観た映画の『ボーはおそれている』にも似通っていて、何もかもうまくいかない八方塞がりな人を楽しんで眺めることが出来るのは、フィクションの醍醐味かもしれない。現実だと心配が勝るから。
神の視点から、愛おしいな〜って思いながら見ていられるのがいい。
そういう意味で、温湯くんありがとう。強く生きような。


最後に

名探偵のいけにえあたりから読み始めた方だと、もしかしたら白井智之の短編もキレッキレなことに気づいてないかもしれない…??
そんな時は、この『縛られた男』もだけど、『少女を殺す100の方法』がおすすめ!

ついでにこちらのエッセイもぜひ!
出身の千葉県印西市のサイトに書いていたシリーズで、どれもとても市と提携しているとは思えない尖り具合に思わずにこにこ。
白井先生の分は、こういうゆるい短編とかエッセイとかでも独特の風味があるところが好き。

PROJECT.05 MYSTERY in INZAI|メイク インザイ オリジナル

今後もどんどん白井作品を読んでいこう!