午前五時の殺風景

ミステリとホラーを好む社会人。音楽もたまに。日々言葉が死んでいく。

Light and Shadowが好きな話

久しぶりに一曲についてだらだら書きたくなった。
ポルノグラフィティの『Light and Shadow』です。

またメモ書き程度に脈絡なく書いていく。


前談

暁の感想でもちょこちょこ書いたけど、私は岡野昭仁の心が叫んでいる歌詞が大好きです。
うたかたとか、n.t.とか、Fade awayとか、音のない森とか、ROLLとか、葛藤を大自然に乗せるようなもの。
晴一さんの歌詞ってどこか一歩引いているというか、斜に構えているというか、あくまでもフィクションとして捉えられるものが多いからこそ、昭仁さんの重い感情の曲は特別感がある。

そんな中でもとりわけ好きなのがLight and Shadowなのですが、たぶんこれ、本人達も作ったこと忘れてない?ライブでやらなすぎじゃないか?

いやわかるよ。アルバム曲だし、シングル一曲しか入ってない結構コアなアルバムだもんね、2007年だから割と昔だしね。

わかるけど!!わからない!!名曲だろうが!!
もうこのまま一生歌われない可能性もあるなんて許せない!!
だからせめて好きな気持ちだけこの場に吐き出しておきます。


曲全体について

一言で言うと「一歩踏み出すのにはエネルギーが必要」って歌詞だと思う。
頑張れと励ますでもなく、大丈夫だよと気休めを言うのでもなく、ただただリアルに変わりたいと願っている。
その必死さが刺さる曲。
歌詞の好きなところを挙げると全部になってしまうからキリがないので、この先ポイントをあげて話していく。


キスの使い方が達者

私の好きな岡野昭仁の歌詞のトップに居座り続けている子がこちら。

夜明け前 瀕死の僕を蘇生してくれ
キスなんて無駄なのさ 心が濡れていない

こんなに生々しいのにいやらしさのないキスの使い方をする岡野昭仁、とんでもない。
"キス"と"濡れる"は結びつくとなかなか色気があるのに、直前に"瀕死"がきているせいでこんなことになっているわけだけど、ここからサビに突入するのもまた、主人公の切望に拍車をかけていて上手い。

「形式だけの慈しみが意味ないくらいに瀕死」というカラカラ具合を表すのに、そういう言葉を選ぶあたり感情(というか肌感覚)の強い人だなと改めて思う。


愛おしい弱さ

この曲の主人公はかなりぐずっているので、そういう歌詞がずっと続く。
1番のサビで

かよわい羽広げ大地を蹴り出す力が欲しい

と言ってるからまだ飛び立ててはいなくて、2番でもまだ

日は昇り落ちて また僕を隠すんだ

と元気なくすし、その後もさらに

震える心で叫びたい

だからまだ叫んではないし、最後の歌詞でさえも

きっと必ず扉は開き飛び立てるだろう

と、希望は持つものの飛び立ててはいない。

自分を蝶に喩えたりもしたのに、飛び立たないまま終わる。
ストリングスからも感じる清廉な雰囲気のメロディーに反して、歌詞の陰険さよ。

確かに飛び立つのって怖いし時間がかかる。
微かな希望を手に少しずつ変えていくしかない。
そのリアリティと燻った感情への愛おしさを感じずにはいられない曲だ。


岡野昭仁(当時)にとっての暁

私はこれが岡野昭仁流の『暁』だと考えている。
夜明け前の薄暗い時間帯、いつか夜明けは来ると信じて膝まづいて夜を耐え凌ぐのがまさに同じ。
ただ暁では「光と闇が交互に訪れることも客観的に捉えられている」のに対して、こっちは「目の前の夜が明けることしか考えられていない」っていう、必死な時特有の思考の狭さがある。また僕を隠すんだ、のところは特に。
これが昭仁さん作詞の"重さ"であり、聴き手の胸を刺すポイント。

上手だよなあ……昭仁さんは晴一さんの歌詞をリスペクトしていて、それは当然としても、昭仁さんの歌詞だってめちゃくちゃ良い。
お願いだからもっと自信を持ってほしい。
(いやどの立場で偉そうに言ってんだって話ではあるんだけど……。)


ポルノグラフィティがやってきたを観る

この曲を軌跡を辿りたいのに私がファンになったのは発売よりずっと後なので、この一つのライブDVDを観ることくらいしかできないわけで。

それでこのライブの良かったところの話になるけれど、

陽は昇り落ちて また僕を隠すんだ

のところで昭仁さんに当たっていた照明が少しずつ消えるところとか、

震える心で叫びたい

で本当に叫ぶように歌っているところとか、やっぱりCD以上に良かった。(CDは裏声)
ギターのアレンジも2番はかなり主張が強くて、見えない世界やsearch the best wayの頃を彷彿させる。
ストリングスが効いていると書いたけど、ライブだと(ポルきたはたぶんいなかったから)シンプルなロックに聴こえる。


今の岡野昭仁に歌ってほしい

両手から足先に繋がる赤い血液を巡らせ
震える心で叫びたい

のところは前述したようにCDは裏声で歌っているけれど、今の昭仁さんならたぶんもっと声出るはず。
ここ、叫びながら歌ってくれ。ポルきたと同様に。

昭仁さんって特に歌詞の意味を深く解釈して歌っているわけではなく、雰囲気を感じ取って歌うタイプみたいなことを言っていた気がする。
それなのに歌詞とピタッと歌い方が合致するからすごいんだけど、特にこれは歌詞通りに叫んでほしい。

勿論原曲の歌い方も良い。
からっとした爽やかな声の持ち主だけど、苦しそうな歌詞のところは優しく歌って区別をつけて、がなるようなのは一切なくて、それはそれでこの清廉潔白な感じが出ている。
だからこそライブでは情熱的に歌って、このぐずついた主人公をぶち壊してほしい。


最後に

少しだけ本音を書くと、いつかもっと先でもいいから、昭仁さんか晴一さんがエゴサをして「あ、light and shadowやるか」と思い立ってくれたら嬉しい。
私が言いたいのはそれだけです。
もし私が参戦できなくても、何かに収録されるとか、作詞作曲したコメントとか見解とかが新しく出てくればそれでも満足。
とにかく推し曲の供給が欲しい……お願いします。