午前五時の殺風景

ミステリとホラーを好む社会人。音楽もたまに。日々言葉が死んでいく。

2022年 好みだった本

先日サイン本が届いた。
帯が変わったのと、発売開始から1日待っても在庫ありだったので買いました。(一応サイン本未入手の人がいたら優先させたいとは思っているのです。)

2022年は、想定以上に記事(飛び抜けて白井作品解説とライブレポが占めていますが)を読んでいただけて嬉しくなった1年でした。
私の好きな作品を、他の人も好きになってもらい、創作者達にリターンがいけばいいなといつも祈っています。
私一人が好きでいるよりも、ファンが増えた方がね、経済が回るので……。

さて2022年も終わったということで、2022年1月〜12月に発売されたミステリのベスト5をまとめました。
自信を持っておすすめできる5冊なので、未読の方はぜひ。



5位 月灯館殺人事件 (北山猛邦)
北山作品はそんなに読んでいるわけではないのですが、なんだかんだで「北山の首切りと物理トリックはおもろい」という認識くらいは待っている。
それで読んだ本作、あまりにも面白かった!首切り殺人!物理トリック!オンパレード!
まっっったくもって正統派ではないアンチミステリだけれど、オチにあった文体と、揺るがない物理トリックと、ミステリ愛があるから全て許されてしまうし、傑作になりうる。
こりゃあすごい……。



4位 俺ではない炎上 (浅倉秋成)
『六人の嘘つきな大学生』も良かったけれど、こちらも良かった。
ネット上で犯罪者に仕立て上げられた主人公が逃げ惑うサスペンスで、時々「いやいやそんなことしたら不利になっちゃうでしょ!」と突っ込みたい気持ちも出てきたけれど、それでも読ませる文章力よ。続きが気になってしょうがなかった。
ネットでのコメントがリアルで普通に嫌悪感が高まったりもしたかな。



3位 11文字の檻 (青崎有吾)
青崎有吾作品大好き。
実は収録される前にアンソロで読んだ作品が結構あったのですが、その時点で『加速してゆく』と『your name』が傑作であることを知っていたので、お気に入りになるのは決まっていたようなものだったんだけど……。
その予想をさらに超えてきたのが表題作『11文字の檻』。なんだこれは。
牢獄で11文字のパスワードを当てなければいけないというCUBEを想起させるデスゲーム(死にはしない)設定なのに、推理の過程もオチもひっくるめて青崎先生らしい。
これはこの人じゃないと書けないんじゃなかろうか。
「青崎有吾といえば『水族館の殺人』とか、まあ長編だよね」って人たちにはぜひ読んでほしい。短編も最高!

今後単行本にまとまるであろう『地雷グリコ』シリーズにも期待が高まる。これもゲーム性のある短編たちなので。



2位 方舟 (夕木春央)
初めて読んだ作家さんの本。
帯が煽りすぎでほぼネタバレみたいなコメントもちらほらあったので、衝撃を感じきれなかったところはあるけれど…。
盲点のつき方が上手だし、謎解きも最近のミステリの中ではシンプル寄りで、原点回帰した気持ち。設定の時点でもう、よくこの令和に作り上げたなと涙出そうに嬉しかった。
読み終わった後に人と感想を語るのも楽しかったし、伏線回収の再読も楽しかったです。



1位 名探偵のいけにえ 人民協会殺人事件 (白井智之)
即決。今年はこれに並ぶ作品はなかった。
……まあ、最初に写真を載せている時点で1位はバレバレだった気もしますが。

何回読んでも飛び抜けて傑作だと感じられる一冊。
伏線の張り方、ロジックの狡猾さは勿論のこと、それをベースにしながらもカルトホラーのようなストーリーを損なわず、読者に知的興奮を与え続ける。何度鳥肌が立ったことか。「思いついてもやらねえよ…」なロジックが詰まっていて好き。
有栖川有栖のロジックに痺れたことをきっかけに本格ミステリの沼にハマった身としては、やっぱりこういう毒にも薬にもなる過激で緻密な推理を喰らいたいと常に思うのですよ。
そんな理想がここにありました。ありがとう。白井作品の推理、私の健康にとてもいい。


総括

実は『此の世の果ての殺人』とか『情無連盟の殺人』とか『風琴密室』とか、まだまだ積んでいる本が多いのです……。
豊作で読みきれなかったのが悔しいけれど、まあ2023年に読んで面白かったら記事にしようかと思います。
『名探偵に甘美なる死を』『コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎』も本当は入れたかったけど、10位までを評価できるほど読んでないのでカットしてしまった。


ではまた。