午前五時の殺風景

表染という、ミステリとホラーを好む社会人が書いています。日々言葉が死んでいく。

【2021年の好みだった本】遅れた

怒涛の勢いで一年が過ぎ、気付けば2022年になった。濃すぎて逆に何も覚えてないくらいのスピード感。こんなに追われた一年を過ごしたかったわけじゃないのに。

 

明日から冬休みが明け、出勤の義務が再開するため、憂さ晴らしに去年2021年に読んだ面白い本をまとめてみる。ジャンルは限らない。あと、あくまで「2021年発売」ではなく「表染が2021年に読了」という基準になっている。

少し作家被りもしてしまっているけど、贔屓目の眼鏡を外せない無能オタクだと憐れんで放っておいてほしい。

 

【人獣細工】 著:小林泰三

数年ぶりに再読した短編集。表題作の『人獣細工』は、豚の細胞からの移植手術を受ける女の子の話。人間とは何か、自分が本当に人間だと言えるのか、鬱々と考えて眠れなくなってしまうほどに思考が乱される。その他収録されている『吸血鬼』『本』も短く読みやすい一方で悪趣味な展開が楽しい。

 

 

【ほねがらみ、異端の祝祭】 著:芦花公園

ろかこうえん、という聞き慣れない作家名。どうやら新人らしい。ホラーの方も追っていきたいと思い新刊をちょこちょこ買ってみたのだが、これは大当たり。ほねがらみはあらゆるホラー要素が盛り沢山。対する異端の祝祭はカルトホラーがメイン。ミッドサマーが一世を風靡(?)したこのタイミングで和風カルトを読めて良かった。

 

【忌館 ホラー作家の棲む家】著:三津田信三

今年は三津田作品を9作読了。その中でも、これが一番洋画ホラーの勢いと和製ホラーの気持ち悪さと謎解きが融合していて好みで、衝撃を受けたので代表して。少しくどく思えていた詳細な語り口もエビデンスとして積み上がる上に、なぜか癖になる。

 

【死体の汁を啜れ】 著:白井智之

ケープタウンと同じくらいの犯罪率を誇る牟黒市。そこでは人がやたらよく殺される上、しっちゃかめっちゃかな死体ばかりが見つかる。奇妙な人物、奇妙な死体、予測不能の展開、全てから目が離せない連作短編集。

これは勢いで感想レビューも上げてしまうほど面白かった。残酷な事件に反して、ユーモラスで淡白な語り口で進められる謎解き。後半からのスピードアップというか、アクセルのかかり方も過激。伏線の忍ばせ方もますます達者になっている。褒め言葉しか出てこなくて申し訳ないくらいに面白い。私の2021ベストはこれだ。

 

【あと十五秒で死ぬ】 著:榊林銘

あと十五秒で死ぬことがテーマの短編が四つ収録されているミステリ。死ぬまでに十五秒の猶予が与えられた女性の生き様を描く『十五秒』。目を離した隙にドラマがとんでもない結末へ変貌している『このあと衝撃の結末が』。事故に遭うまでの十五秒を繰り返し続ける『不眠症』。首が取れても十五秒以内にくっ付ければ死なないという変わった人間たちが住む島で起こる『首が取れても死なない僕らの首無殺人事件』。

個性の強すぎる話が詰まった榊林銘初の単行本。特殊設定ミステリ好きは見逃せない一作。全ての短編があと十五秒で死ぬことをテーマにしているのに、ここまで多様な作品が完成するとは。しかも全編完成度が高く、収録作の中でのベストを決めたら票が割れる気がする。ちなみに私の一押しは、『このあと衝撃の結末が』。ミステリ小説と謎解きイベントの融合がされていて、両方好きな身としては終始大興奮の作品だった。

 

【孤島の来訪者】 著:方丈貴恵

竜泉佑樹は殺害を目論みながら、無人島へのロケへ同行する。しかし初日からターゲットの一人が殺されているのを発見してしまい……しかも犯人の正体は人間じゃない?

よくありがちな孤島、特殊設定、かと思いきやとんでもなく達者。特殊設定であることも丁寧に検証するところが目新しく感じた。その上読者を手玉に取るような謎解きは、ミステリ好きこそ唸ってしまう。ちなみにシリーズ2作目らしいが、私は1作目を未読なので今年読むつもり。楽しみ。

 

本当はあと3作くらい選出したかったのだが、突出して記述するのにキリが良かったためここで打ち止めとする。さらば2021年。