午前五時の殺風景

表染という、ミステリとホラーを好む社会人が書いています。日々言葉が死んでいく。

東京結合人間/白井智之 ネタバレ有レジュメ

久しぶりの投稿となりました。こんにちは、表染です。

前の記事の時点では学生だったのに、ついに社会人となってしまいました。つらい。

 

今回は、東京結合人間(著者:白井智之)のネタバレしまくり記事を書きました。といっても、学生時代に読書会用に書いたレジュメをほぼそのまま上げるだけの供養回です。あしからず。

 

 

よって、以下は東京結合人間を読了した方のみおすすみください。

「読んだけどなんだかよくわからなかった……」という方、大歓迎!私もすべて理解したとは到底言えないほど濃かったので、一緒に振り返っていきましょう!

※雑にもほどがあるくらいの簡易版です。推理の要所は押さえたつもりですが。

念のため、インターバルとして著者紹介も入れておきますね。ではどうぞ!

 

 著者紹介

1990年、千葉県印西市に生まれる。東北大学法学部卒業。学部3年のころから東北大学SF.・推理小説研究会に所属していた。執筆は行っていたが、周囲にはあまり読ませていなかったらしい。2014年『人間の顔は食べづらい』が第34回横溝正史ミステリ大賞の最終候補となり、有栖川有栖氏と道尾秀介氏の推薦を受けデビュー。大賞受賞作以外が強く推されてデビューするパターンは珍しい。また、処女作の帯には綾辻行人氏から授かった異名として『鬼畜系特殊設定パズラー』と書かれている。その後、兼業作家として現在まで鋭意活動中。刊行作品は本格ミステリベスト等のランキングで高い評価を得ている。好きな作家は横溝正史三津田信三平山夢明エラリー・クイーンなど。

エログロミステリの書き手として約年一冊のペースで刊行をしている。作品には変わった名前の登場人物が多く出てくるが、これは作者自身名前を付けるのが苦手であり、そもそも世界観に合わせるには現実味のない名前のほうがいいという理由からである。作中には暴力、人間関係の不和が多数出てくるが、本人は虐待やいじめなどのニュースを見て気分が落ち込んでしまうほど繊細な人物らしい。

薄禍企画という同人誌グループにも加わっており、短編を書くことも。顔出しはNGだが、そういった雑誌の販売会やトークショーには何度か出現している。

(2022.9.11 修正済)

 

  登場人物紹介 ※微バレ有

白井先生の作品は別の意味で登場人物の名前や性別が覚えづらいので、登場人物一覧を入れるべきだとずっと思い続けているんですけどね。なかなか実装されませんね。

 

寺田ハウス関係者(売春の斡旋)

・ビデオ…家庭環境が良くなかった男性。頭が働く方。

・オナコ……嗜虐趣味のある女性。一番いかれてる。

・ネズミ……寺田ハウスのリーダー。身長が低い男。「身長の高い女はメスじゃなくて生ゴミ

・瀬川栞……監禁されている少女。

・下村茶織……栞のために連れ去られた少女。

・ヒメコ……売春されている少女。

・中村大史…寺田ハウスの取引相手。

 

“TERADA HOUSE”出演関係者

・今井イクオクルミ……探偵

・圷ミキオミサキ……フリーライター。養子に出した娘がいる35歳。

・小奈川ヨウスケミイ……高校教師。ミキオは教え子。

・浅海ミズキハルカ……元内科医。40歳前後。

・丘野ヒロキチカ……無職の23歳。

・双里ワタルカオル……イラストレーター。30手前。

・神木トモチヨ……元生命保険外交員。宗教かぶれ。

・狩々ダイキチモヨコ……カリガリ島にすむ人。娘大好き。

・麻美…狩々ダイキチモヨコの娘

 

(2022.9.12 追加)

 

内容 ※ネタバレ有

【プロローグ】

一行目から性行為……かと思いきやただの性行為ではないというぶっ飛んだ始まりが最高。一ページ目から親に魅せられないシリーズに追加決定(葉桜の季節に君を想うということ、みたいな)。

川崎千果とヒロキが結合します。成人女性が子供を産むには身体的負担が大きいので、結合をすることによって単純に二倍サイズの人間ができて、その分出産も楽だという世界。これ、浮気ができないシステムになっているんですかね? いや単純に、巨大な人間二人が性行為をしていたら気持ち悪いよねっていう話なんですけど。(読み飛ばしているかもしれないので誰か教えて。)

 

【少女を売る】

  • 寺田ハウスの3人が、監禁している栞の友人を探しに行く。「お人形さんみたいにかわいい子がいい。学校の友達は嫌だ」との要望。少女を捕まえたが、運悪く車で引いてしまったので顔はぼこぼこである。(結合人間スーツは正直無理がある気もするが、オネストマンが出てくるこの特殊設定下でトリックを仕掛けるには”化ける”という操作は必要不可欠なのかもしれない。)
  • 栞が監禁されるに至った経緯と、寺田ハウスメンバーの出会い。オナコは素行が悪くカラスに人を食わせるような人。(ここで喰われているのが、栞の兄。兄と栞は生まれてから六年間親に監禁されている。)
  • ヒメコとビデオが客の家に向かうとトラブルが。(ここのヒメコの発言が伏線になっているのがたまらないです。)
  • 暴行により栞と茶織は死亡。ビデオは、他人の指示に従うことが美徳だと信じている様子だった栞に違和感をもつ。「友達が欲しい」という人を道連れにするような言葉だけが浮いているように思えたのだ。(この時点で救われてほしかった二人が呆気なく死んでしまう……かわいかったのに……悲しい。)
  • ビデオは栞の周辺情報をあさる。栞は中学校では、ビデオたちが思っているような子ではなく、周囲を見下しているようなタイプだった。むしろ栞のような性格だったのは”ダニ”=ヒメコのほうで、二人は親友だったらしい。栞は、ヒメコを連れてきてほしくてあんなリクエストを出したようだ。また、栞は羊歯病患者が蔓延する区域の近くで輪姦されたこともあった。(倫理が壊れた白井ワールドでホワイダニットをすすめていく違和感、でもまあいいかと思えてしまう混沌、これぞ真骨頂という感じがする。)
  • 中村が逮捕された。道連れになる事を恐れたビデオ、オナコ、ネズミの三人は拠点を去って逃げることに。
  • 1年身を隠し東京に戻ってきた3人は、売春をやめ映画製作をすることに。オネストマン7人を集めて孤島で生活させるという『TERADA HOUSE』を企画。(いろいろ怒られそうな名前だ。)しかしオネストマンが5人しか集まらなかったので、残りの二人はノーマルマンが結合スーツを着てやり過ごすことに。つまりヤラセ。
  • 撮影場所へ向かうことにした10人。船の上で、ビデオは今井に声をかけられ、3人の罪は全て知っていると言われる。栞は輪姦された際、羊歯病に感染していた。オナコに兄を殺された恨みを晴らすため、寺田ハウスメンバー3人と体の関係のあったヒメコに性格を寄せ、オナコも羊歯病に感染させようとした。しかし誰がオナコかわからなかったうえ、メンバーの一人(オナコ)しか自分と性行為をしてくれなかったので、もう一人誰かを巻き添えにして3人とも感染させようとした。暴行を受け入れたのは、注射痕が無いのを隠すため。罪を知られた3人は今井に掴みかかるが、反撃されて3人とも海に落ちて死亡。(探偵役っぽい今井が出てきたと思ったら、古参3人が即死亡という……まあ実際一人は生きているけど。死に際にビデオが「なんなんだ、これは」と言っていますがまさにその通り。それにしても、カラスの暴行事件とリンクしているとは。あれ、ただの性癖描写だと思っちゃうでしょ……。)

 

【正直者の島】

※アリバイについてはほぼ書いてないです。省略。

  • 一日目(12/1)。出演者7人は島に到着した。
  • 狩々の案内により7人は宿泊施設へ。
  • 自己紹介。
  • 狩々は娘に対して異常なまでに過保護。双里が麻美の名前を呼びびっくりさせたことで激怒した。二重人格者ジョイントマンである可能性も。丘野はそれを執拗に気にするが、トイレに行った後は様子がおかしかった。ここで一日目が終了。
  • 二日目。圷は、丘野が外へ出ていることを確認。床に白いゴム紐が落ちていたり、シイの木に糸をまいた跡のようなものが残っていたりした。丘野はジョイントマンの真実を掴もうとカリガリ館へ向かっていた。そこに圷と今井も合流し、狩々親子の遺体を見つける。二人は別々の場所で殺されており、麻美には他殺の形跡があり、ダイキチモヨコは狂気が近くに無かったという理由で他殺確定。
  • 狩々親子が殺された状況は、丘野たちの監視により密室となった。そして容疑者7人の中で犯行を認めるものは誰もいない。
  • ゴム紐とシイについた後は、ダイキチモヨコが娘を襲いに来る人物のために仕掛けた罠。
  • 三日目。その日の夜、丘野と圷は宿舎の外にゆらゆらと結合人間が歩いているのを発見する。
  • 四日目。昨夜うろついていたのは双里。そして高熱で昨日から寝込んでいた双里は、羊歯病を発症した。
  • 五日目。双里は自殺未遂。圷は雪崩に巻き込まれる。神木はカリガリ館の玄関ロビーで遺体となって発見された。
  • ノーマルマンが二人紛れているという事実に気付いた。(この部分の推論が、出発時の双里の「私、遅刻してませんよね?」の一言だけでなされているの、論理の飛躍はあれどシンプルでわかりやすい。かつだいぶ印象的な台詞だったと思うんですよね。)
  • 六日目。今井は犯人が分かったらしい。一方丘野は、カリガリ館へ向かう道に神木のものらしきポーチと足跡を発見した。足跡は途切れていたが潮が満ちた際に消えたと思われる。
  • (1-1)七日目。連絡船を待つためカリガリ館に向かった5人。そこで今井は謎解きを開始する。【狩々親子殺害】親子心中に見せかけなかった点が気になる。二つの死体とも子供部屋で発見させようとしたが、予期せぬ丘野たちの登場により犯行現場から立ち去ることが不可能になってしまった。だからダイキチモヨコの死体をアトリエに移動し、発見してもらうことで、自分が逃げる隙を作った。さらに、ダイキチモヨコが仕掛けた罠に自分が引っかかってしまったので心中を装うことはできず、諦めて“漂流者が宿舎のナイフを持ち出して無理心中に見せかけようとしたというシナリオをダイキチモヨコが考えた”、という偽装をするため宿舎のナイフを使った。そかしそれだとダイキチモヨコが罠にかかったことになってしまうのでおかしい。→犯人は麻美が罠を仕掛けていると思い込んでいた。よって神木が犯人。【神木殺害】神木がカリガリ館に向かいそこで殺されたのが確定すると、アリバイにより丘野が犯人。
  • (1-2)丘野は反撃して浅海犯人説を唱える。麻美を殺したのはダイキチモヨコで、二重人格者だったため自分のもう一つの人格を殺そうとして罠を仕掛け、見事引っ掛かりアトリエで息絶えた。道中に血痕が見つからなかったのは吸血ダニが吸い取ったからである。ダイキチモヨコは罠で死んだにもかかわらず嘘の検視結果を述べた浅海が犯人。→あっさり否定
  • (1-3)背の低い男性とセーラー服の少女が登場。少女は茶織の妹っぽい。→丘野の反撃で死ぬ。男性は寺田ハウスに姪っ子を殺された復讐をするために今井を雇った。→突風に吹かれて死ぬ。
  • (2-1)定期船の乗組員は乱入者二人によって殺害されていた。丘野はプロローグで出ていた川崎ヒロキチカだった。(振り返ると、プロローグではヒロキの苗字が意図的に隠されていることがわかる。ここの仕掛けに関しては登場人物には関係のない事で、あくまで著者と読者のやりとり。)今井が寺田ハウスの3人を殺したことも明らかになった。
  • (2-2)今井の推理は矛盾している。死体をアトリエに運んだのが一番最後の手順だとしたら、アトリエに血が大量に出ているのはおかしいし、凶器が子供部屋にある意味も分からない。
  • (2-3)夜間ふらついていた結合人間は双里ではない。羊歯病患者なら色白く見えたはずがないから。肌の色や目撃証言を統合して、正体は神木。
  • (2-4)完全推理パート。詳細を書くと長くなるので割愛します。なる神木の夢遊病についてのパターン分けと、カリガリ館までの神木が通った経路等を考慮していくと犯人はノーマルマン二人でグルだったとわかる。
  • (2-5)誰がもう一人のオネストマンだったか考えると、今ここにいる全員がオネストマンであるか、ノーマルマンであるかという話になる。当然前者なので、もう一人のノーマルマンは今井だった。
  • (2-6)犯人今井によって眠らされていた空白の一日が存在していた。そこで彼は好き放題していた。

(*)事件は解決した。本土に戻ってから、圷には娘からの連絡が届く。

 

【エピローグ】

ヒメコとオナコが再会し、ここから本当の謎解きが始まる。先程の謎には矛盾があり、定期船が圷のカウント通りに来ていたことと、鉈が波にさらわれていないことがあげられる。キーになるのは、落ちていたポーチの隣にあった雪だるま。作ったのは、姿を見せていない謎の子供であり、その子は丘野と結合したことで姿を消した。正確には、丘野になりすましたオナコに、だ。

ヒメコは栞に復讐するように仕向けた。さらにヒメコの父親は圷。ヒメコは圷のことを嫌っており、死んでほしいと思っていたから、最終的に自分の手を汚さずオナコに殺害させる。だからこそ最後の「レイプされちゃう!」である。この子が事件の全てを操っていて、かつ、この作品の中で一番頭の切れる子だった。

 

 

感想 ※ネタバレ有

・【少女を売る】だけでも筋が通っていてなかなかに話の序章としては面白いのに、そこでの人間模様が後半と密接に絡んでいるところが最高。読み返すと全てがつながる。このまとまりの良さは、白井作品の中でも最高値だと思うし、一番好き。

・暴力描写は作者の趣味にしても、暴力を振るわせた意味(注射痕を隠すためとか)がきれいにつながっているところがこの人の強い魅力。

・神木の影が死ぬまで薄かった。まさに死ぬために用意されたような登場人物で、とても不憫。ただこの作品は大半の人間が死ぬために登場しているというか、邪魔な人間は容赦なく死んでいくタイプなので許せてしまう。(人間が書けてない!とキレる隙もない。そもそも人間をかこうとしていないだろうから。)

・今井が犯人だとわかってからの怒涛の推理劇は刮目。正直ついていけないかもしれないけどなんかすごいことはわかる……というだけでも十分だと思う。勢いを感じろ!

・船舶から人が落ちて死ぬドタバタ劇で、荷物の落ちた音がした所すらも入れ替わりの伏線だったのがとても痺れる。

オネストマンという点に焦点を当て続けて、最後の最後に”結合”という特性を持ってきたのはうまい。絶妙に読者の意識をそらしている。そうだよね、一番の特性は結合することだよね……。

・ヒメコちゃんかわいい。天才。陰でものすごく頭のいいことをしていたのね。ヒメコちゃんが客の元へ向かう『少女を売る』のところ、読み返してみて。本当に鳥肌ものだから。この時からすべてを企てていたのか。